Site cover image

Site icon imageちちもブログ

日々の徒然

「天気の子」16歳がたくましく生きる映画。

公開から1週間くらい経ってから観たけど、感想を書いてみる。

映画『天気の子』スペシャル予報

東京サバイブ

本作の主人公は16歳の少年と年端が似た少女であるが、とにかくこの少年少女の生き様をとてもたくましく感じた映画だった。「いまの16歳ってこんなにたくましいのか、自分の頃とは違うなあ」と思ったのだが、世間の16歳が観客として観たとしても違和感がない作りになっているという前提に立つと、それなりにリアリティがあるのであろう。つまり実際にたくましい(はずな)のである。

ネタバレにならない程度に書くが、まず舞台は東京である。新海誠クオリティよろしく、この東京のディティールをしっかり描ききっており、実在する商品や企業、ネットサービスや、その使われ方の描写がとてもリアルで、まずそれだけでも、色彩と線が綺麗になった東京を楽しめる。その綺麗なリアリティある東京で、16歳の少年が頑張って生き抜こうとするのであるが、身の回りに起きること、その時の対応が、実にたくましく、見ていて感心した。世の中の16歳ってこんなに賢くってたくましいのかと感心した。自分が16歳のときは遊戯王カードのことしか考えてなかったぞと思うと、まったくもって、温室育ちのあまちゃんだった自分を悔やむ。

さらに、人とのつながり、愛、運命、というものを16歳でここまで自分ごととして確信を持って捉えられるのか、というのが意外だった。それこそ30年くらいの人生の様々な経験を通じてようやく「あ、自分はこの人と運命をともにするんだ」だとか「この人を悲しませたくないから自分はこう生きるんだ」という感覚を得る気がしていて、16年の人生経験で、ここまで一人の異性に対して固執できるのは、思春期で頭が沸いているか、はたまた最近の16歳は想像以上に人生経験豊富でませているのかどちらなのだろうか。周りの大人と一緒に行動するだとか、自立して生活するだとか、そういったことを社会の中で自分に起きた出来事として捉えて、東京でサバイブして、大人びた人間関係を構築していく主人公に面食らったというのが正直な気持ちである。単にうらやましいな、自分はこんなに豊かな経験できなかったな、というジェラシーだけなのであるが。

作中ではこの少年を取り巻く環境がシビアで、東京で生き抜いていく辛さ、大変さというのが、少年だからこその目線で描かれる。「早く大人になりたい」と何度か口に出すシーンがあるが、実は大人になってもこの大変さは変わらず、むしろ更にしんどくなる可能性もあるんだよと、現代日本の暗部を照らしているようにも思えた。彼らのどん詰まり感は、少年特有のものではない。

音ハメの演出

そんな16歳少年少女の東京サバイブに、天候を操る特殊能力というを変数を入れ込みながら、しっかりと観客を感動へと導いていたのは、さすがだと思った。「君の名は。」でのメインテーマ曲「前前前世」の使い所に腑に落ちなかったり、いまいちどのへんが盛り上がりどころか掴みづらかったという印象を持っていた自分としては、本作の音ハメの良さ、「ここでぐっときてね!」というわかりやすさ、観客に疑問を投げかけないすっきりとしたハッピーエンドスタイルといった、大衆ウケする形へと変形していた点が清々しかった。2時間という制限時間の中で、感動の落差を作るために、ハイテンポな音楽と幸福な日常の様々風景と主人公たちの交互の語りによって「なんかいい感じに日常が過ぎていって、関係値としても深くなって、想像できる範囲のことだったりは一通り起きて、幸せが積み上げられているだろうな」という世界に関する前提をアップデートするという技法が何度か用いられていた。これによって、世界の完成度を短い時間で観客の頭の中に練り上げることができ、その分、その後に起きる悲劇の落差をつけやすくなっていると思った。出来上がった世界がトラブルによってぶっ壊されていくという描写を活かすために、幸せを確りと作り込むという意味では、アシスタントが丹念に書き込んだ背景をあえてぼかすという新海誠さんの制作スタイルそのものなのかもしれないなとか今思った。結果、見事に、ディストピアから一縷の希望=少女を見出すというストーリーが描かれていた。

ところどころ少年少女のやりとりが青臭くて目をそらしたくなってしまうところもあったが、照れもせず観客が欲しがるものを提供していた新海誠さんは名店だなと思った。思春期はとうに終わった自分でもそれなりに楽しめた映画だった。

あと気になったところ

テレビCMなどでバイトルやカップヌードルとコラボして新しい広告の形を取り入れているのも興味深い。前作「君の名は。」が大ヒットし、組める相手に不足なしの新海誠映画だからこその大技であると思う。こういった広告の方法としては「TIGER & BUNNY」以来見かけていなかったが、さりげなさという点で進化していた。

エンドロールのデジタル動画スタッフに中国人とベトナム?人がやたら多かったのも目立った。作り込み部分はほとんどオフショアで作ってるんだろうなー。

探したら小説はあった。もっとメディアミックスしてるかと思ったけど。