Site cover image

Site icon imageちちもブログ

日々の徒然

AIが現れる以前に人間は十分愚かである。

AIが発達することで、人間は知的生命体としての立場を奪われるのでは?という議論にも似たただの狼狽や扇動をよく見かけるようになったが、そもそも知力というものを人間の拠り所にし過ぎではないだろうか。

そもそも、マスメディアやSNSの奴隷である我々に、思考能力と呼ばれるような後生大事にするべき能力はすでにない。AIを怖がるポイントを間違えている。気づいた瞬間にはすでに人間を超越している。

蒸気機関や油圧機器が出現することで、力自慢が無力化されたように、AIの出現により、知力自慢は無力化される。ショベルカーがそうであったように、所詮ツールであるものは使いこなせば良い。AIという人間より圧倒的に優れた知力ツールは使いこなせば良いのである。

AIによって代替される思考、代替したい思考というのは、元々人間の思考可能な領域を超えていたり、人間がわざわざ思考する必要のないものになると想像している。その部分に当てていたエネルギーを別の部分に充てれば良い。AIがあることで新たに人間が思考しなければ行けない領域も発生するだろう。

知的労働と呼ばれるものの大多数がAIによってなされていくことも想像に難くない。現代において、機械の入っていない建築現場があるだろうか?ほとんどないだろう。肉体労働が機械によって代替されている(大部分を支援されている)のと同じことが、知的労働においても起きる。AIに比べたらコストが安く済むかわりに精度も低く、生産性も低いがそれで十分な知的労働は人間が行うというシーンや、人間がやったほうがフィットする知的労働も一部残るだろう。これも肉体労働と同じである。

知的労働の価値低下について、同じこと言っている記事を見つけた。AIの思考回路は、その過程が人間に理解できない、というのが面白い。人間の思考とプロトコルが違うためである。原因から論理を積み上げて結論に至るのではなく、原因から直接結論を導き出す1対1の写像関係の中で導き出される。

AIが知的労働をしてくれるようになると、経営者の感覚も変わるかもしれない。誰もがAI知的労働集団を保有できるような世界線では、自宅前に自動販売機をおいて小遣いを稼ぐように、AIサーバーを保有し、知的労働を受注することで小遣いを稼ぐようになるだろう。AIサーバーの管理さえしていれば、現代の地主のように寝て暮らせるような人は出てくるはずである。知的生産が可能な資産の保有である。(ただし、ROIポジティブになるような高性能AIは何億もするはずで、それを保有できるのは富裕層であることに変わりはない)

資本主義とは、資本を持っているものが、知的創造によって、資本にレバレッジを掛けて、世の中から資本以上の価値を引き出していくことで経済的リターンを得る仕組みである。その知の根源がAIになっていった場合、人間がAIの思考に追いつけないという前提では、資本の初期値のみによって、差分が永遠に広がっていく。

知的労働において、人間の上位互換が出てくると言って、人間に価値がなくなるわけではない。AIは人間ではないので、人間がやることに意味が残される分野、例えばスポーツや演技などの分野においては、人間に優位性が残される。人間であることに意味があり、人間がやることで共感や意味が発生する分野である。

また、すでに人間に大した思考能力がないという話に戻すと、メディアやSNSで発信される情報自体がAIに依るものであれば、我々はすでにAIの奴隷であると言える。

記事中では、政界はほぼもうそうなっていることに言及されている。データによって政策を決め、選挙戦略を決めている。人間はデータの傀儡となりつつある。そして、それに無自覚であることも触れられている。倫理や道徳に代表される、答えがない思考や、難しい思考についても放棄すると予想されている。それも無自覚に放棄している状態となると。これはAIが優秀というよりは、それがあまりにも滑らかに行われているため、人間は気づけないのである。

ただ、この記事の書きぶりから想像するよりは(記事中でも”幸福な”と触れられているように)、現実がガラッと変わるわけでもなさそうである。卑近な例に置き換えてみると、SNSいる扇動者が、ぶっ壊れた人間からぶっ壊れたAIになるというだけで、そのフォロワーの動きや周辺で起きることにほとんど変わりはないのではないかと思う。扇動者に釣れられて破滅する人、途中で踏みとどまる人、AIの扇動芸が卓越することで多少釣られる割合は増えるにせよ、人間は右往左往し続け、結局どこにも行かない気はする。すでに十分愚かである。

ディストピア的な世界を想像しようとしたときに、知的活動が可能なデジタル存在としてのAIだけでは限界があると思う。人間には肉体がある。AIにはそれがない。AIが肉体を得ることが最も厄介だろう。端的に言えば、ターミネーターの誕生である。彼の国の核爆弾工場に、悪意を持った自律的なAIが繋がれたら?その工場でAIが自律的な思考を持った人間破壊兵器を量産しだしたら?そういったことが起きないとは言い切れない。

だが、それも、人間が、地球に存在した他の種に対して行ってきた報いとして受け入れるべきだろう。万物は流転する。