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Site icon imageちちもブログ

日々の徒然

世界全体の株式市場は伸びていくのか。

「預金をしているより投資」「全世界株であれば世界全体経済が拡大するのだから伸びる」について紐解いてみたいと思った。

株価を要素分解する。

ここで全世界株というのは、世界の各株式市場のインデックスに連動して値動きするETFのことを意味している。各株式市場(各企業の時価総額)の規模に準じて組み込み割合が決まっており、大きい株式市場ほどETFの値動きに影響力を持つ。(実際には組み込み銘柄の6割位が米国株式市場の企業で、ほとんど米国株式と連動するものだったりする。)

株価は、PER(期待)とEPS(利益)によって構成される。

ある企業がどれだけ利益を上げたかが本質的な株価構成要素であり、今回の経済の拡大と株価の関係を紐解いていく際に重要になる。株式市場を構成する企業全体の利益が伸長し、EPSが拡大、その利益の増え方(成長率)に応じてPERが決まり、株価が変動し、株式市場のインデックスも伸びる。つまり、利益が伸びても期待が下がれば株価は下がるし、利益が下がっても期待が上がれば株価は上がるという仕組みである。

以後、世界の企業の利益が上がっていくという要素を軸に、全世界株投資は必勝か否かを判断していくために最初に株価の構成について触れておいた。

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日経平均株価とインフレを考えてみる。

ここで、2024年に入り、史上最高値付近に舞い戻ってきた日経平均株価に目を向けてみる。

日経平均株価は1989年12月29日に史上最高値を付け、それ以降史上最高値を更新できていない。1989年に最高値をつけた際は、大雑把にPERが50倍、EPSが600円だったが、直近の最高値付近ではPERが15倍、EPSが2,000円となっている。単純計算で日経平均株価に属する企業の利益額は3倍以上になっているため、1989年比較で株価が3倍以上になっていないとおかしいと思うかもしれないが、そうではない。PERが1/3以下になっているためである。有り体に言ってしまえば、利益は増えているが増え方に期待が持てないということである。

ここでふと疑問となったのが、良く耳にする「昔の1円は今の1万円」問題である。実際に調べてみると、昭和40年の1万円は、(消費者物価指数換算で)令和4年では4.3万円の価値となっているらしい。日本はデフレだと騒がれて久しいため肌感覚と一致しないのだが、少し長めのタイムスパンでみると日本は基本的にインフレ基調であり(あった)、2000年~2015年の15年ほどがデフレ期間(それでも純粋に前年比デフレだけ考えると下り坂である半分の7.5年程度)であったことが確認できる。つまり、仮に、1940年から2024年まで、ある企業が全く同じビジネスを展開し、全く同じ構造で利益を生み出していたとしても、インフレ(外部変数)によって、利益が4.3倍に押し上げられているということである。では株価も4.3倍になっているかというと、EPSに関してはYesであるのだが、PERが「収益伸びてるって言ってもインフレ連動してるだけじゃん」という理由で1/4.3以下になることで株価が維持されるのがうまいところである。

とはいえ、日経平均株価では、1990年のバブル崩壊後はPERが長年15倍付近でとどまっていることを考えると、株価は、企業利益とインフレにほぼ連動していた形といえるだろう。

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預金より投資の意味。

預金より投資というのは、インフレ影響下において、仮に企業の利益が変わらなかった場合でも、インフレによって利益額が押し上げられ、それに連動して(PERが一定であれば)株価が上昇するという構造を前提にしていると思われるが、インフレかつPERが一定の場合のみ当てはまるのであって、デフレ影響下やデフレによる不景気によって企業の利益が物価調整後で下落している場合やPERが下落して株価が下落する場合については当てはまらない。特に、日経平均株価については長年過去最高値を更新できていないわけであって、一概に預金より投資とは言い切れなかったように思う。一方で、世界全体として見たときに、ある程度の確度を持って、(特にまだ発展途上の新興国において)上記の条件を満たしながら経済成長していく国があるのであれば、その国の株式への投資については、高確率で預金より投資と言い切ってしまって良いかもしれない。

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GDP飛躍の契機。

ここまでで、株価がPERとEPSによって決まり、インフレにどう影響されるかを見てきたが、そもそも株価上昇の根底にあるのは、EPSつまり利益創出の前提となる売上である。売上を巨視的に見ると、GDPであり、株式市場の規模が大きくなる前提として、世界の(どこの)GDPが伸びるのか?を考えてみることは有効であるように思う。

産業革命以後、世界中のGDPはここ300年ほどの間に指数関数的に増加した。産業革命は肉体労働における生産性の爆発的向上の契機であり、今後はAIによって知的労働の生産性の爆発的向上がなされるという予測が立つ。

人口増加フェーズにあり、生活インフラが整っておらず、生活水準が先進国に追いついていない新興国においては、労働人口増はそのままGDP増大につながる。その増加率を飛躍的に変化させられるかは一次産業から高次産業への産業シフトがうまくいくかにかかっている。1990年以降の日本を見ても、労働力の減少とともに経済が失速していることから、人口増加とGDPは一定の相関を持っていることがわかる。

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中国の成長構造。

ここで、次の成長ゾーンを見つけるに際して、中国の直近の経済成長について整理しておく。2000年代の中国の急成長はその人口ボーナスによる大きな内需もさることながら、東アジア全体で分業体制を構築し先進国への輸出を行う工業スタイルの中心地となったことで、先進国の需要を獲得したことが大きい。さらに先進国からの直接投資による中国国内の生産設備の拡充がなされたことも成長を後押しした。中国特有の政治リスクや、言語や通貨による障壁というものがありながら、目を見張る成長を遂げたという実績は大きい。中国国内企業の総時価総額は15年で30倍ほどになっており、他の地域での経済発展のベンチマークとなることから一度整理しておいた。

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アフリカの成長低迷の原因。

2100年までの人口増加を鑑みると、間違いなく注目するべきはアフリカであるが、1980年~2000年の20年間においてアフリカの人口が2倍に増加したにも関わらずほとんど経済成長しなかったり、世界全体、アジア全体のGDP上昇と比べてもアフリカのGDPが成長していなかったりする。アフリカが他国と同様、リープフロッグによって大きく躍進しつつあるとも言われているが、未だ世界経済での存在感は大きくないように思う。

現状、アフリカの輸出の大半を天然資源が占めており、GDPにおける天然資源生産シェアも大きい。農業と鉱業が主だが、こうした一次産業は労働集約的かつ生産性が上がりにくい。そのため、GDPの成長角度を変化させるために、より高次の産業への進出が必要となる。アジアの発展を支えたという理由、雇用を維持しやすいという理由で製造業をあげる論者が多いらしい。一方で、産業シフトを促す際に、閾値以上の投資がなされないと、再び元の状態に戻ってしまうという貧困の罠という現象も確認されており、継続的かつ膨大な投資が必要となるのも産業シフトを阻害している要因と言えるだろう。

産業シフトがうまく行っていないということ以外に、アフリカの経済成長を阻害する要因として、内陸性や人口分散も考えられる。アフリカ大陸は巨大で、内陸国が多く、海外(港)へのアクセスコストが高い。それによって、貿易依存度(貿易露出度と言っても良いかもしれない)が下がり、十分な外需のかくとくがなされていないという背景もある。それを更に後押しするように政治や司法の未発達(汚職や契約不履行など)もあり、アフリカ各国がその労働力や資源を活かして、先進国同様水準でのビジネスを行うことを阻害している可能性も高い。

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インド経済の可能性。

地理的にも経済発展フェーズにおいても、中国とアフリカの間にあるのがインドかと思う。人口と国内企業の時価総額での単純比較だと15年前の中国と言っていいだろう。また、アフリカで経済発展課題にされていた内陸性も実際の大きさを考えてみるとアフリカほど問題ならなそうである。

一方で、インドは様々な観点から次の成長点と目されているが、その先行きは芳しくない。増える労働人口に対して雇用の創出がうまく行っていないためである。小売業における外資の規制、製造業の進化による人力省力化の進行、ホワイトカラーのスキルミスマッチ、など、起爆剤となる人口ボーナス×外需獲得を活かしきれない状態となっている。農業も機械化が進み、人口増に追いつくほどの雇用が生めない可能性もある。

基本的に現時点でリープフロッグを活用すると自動化やデジタル化が進んだ状態の産業が直付けされてしまうため、労働人口を使い切れない。敢えて労働集約度が高い状態のものを(要するに一昔前のものを)導入するという決断が必要になるかもしれない。一方で、それが外資にとっては利益率を下げる行為になる可能性もあり、難しい選択を迫られることとなる。中国は産業の進化(自動化の進化)具合と、人口ボーナスのフェーズがうまく噛み合った稀有な例なのかもしれないと心得る必要があるかもしれない。

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おわりに。

というわけで、アフリカ、インドと今後成長が期待されている2地域を概観してみたが、そこまで楽観的になれないような気がしてきた。世界経済が拡大するので預金より投資だと言い切れるほど状況は簡単ではなさそうである。