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Site icon imageちちもブログ

日々の徒然

1時間以内に日用品を届けてくれるコーナーストアって?

フードデリバリーが活況だが、アメリカでは、500~1000円程度の配達料を払えば、1~2時間以内に日用品をオンデマンドで届けてくれるコーナーストアなるものが注目されている。コーナーストアは、フードデリバリーとは異なり、日用品の配送をメインとし、実店舗を構えることもある。

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goPuff to begin deliveries in West Chester

米国でのコーナーストア

具体例が分かりやすいが、Foxtrotというコーナーストアは、以下のような説明をされている。

  • 買い物代行ではない。Instacartとは違う。コンビニ+配達のオンデマンドサービスというイメージ。
  • Foxtrotはシカゴに4店舗しかないが、市内全域をカバー。市内であれば1時間以内に配送料一律5ドルで配達する。配送料はInstacartの半額。
  • 酒とつまみに特化。消費期限の長い商品を中心に取り揃え、店舗への一括配送を可能にし、物流費削減と在庫破棄コスト削減を狙っている。
  • 店舗数の拡大ではなく、配送網の拡張に投資している。店舗構えるコストより、その店舗エリアを配送カバーするコストの方が安い。
  • 実店舗は在庫センターにもなっている。
  • 取得したデータは需要予測と在庫予測に活用。

コマース+実店舗の「コーナーストアー」とは?ーーコンビニ業界へ進出するEコマース企業「Foxtrot」から紐解く4つの強み

Foxtrotの店内の様子はダークストアと言うよりは陳列がしっかりされている。

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Foxtrot plans aggressive expansion, with 50 new stores over two years

Foxtrotは実店舗を在庫センターとしても使っており、Micro Fulfillment Centerの構想に近い店舗経営をしていると思われる。

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Wanzl - Micro-Fulfillment-Center [Animation] (EN)

米国(特に郊外)だと、このMicro Fulfillment Centerを構えるくらいの土地は手に入りやすいだろうが、日本や都市部でやるとしたら、ある程度立地を犠牲にして駅から離れた雑居ビルや倉庫を活用したダークストア的な展開になるかもしれない。

記事にあるように、30分以内に2ドルで配達してくれるGoPuffもフィラデルフィアで急拡大している。

GoPuffはUBERに買収されたフードデリバリーのPostmates内に、GoPuffコーナーを設けている。

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Postmates - Everyday Needs by Gopuff

※ 余談だが、記事中に出てくるお弁当配達サービスSpoonRocketとSprigは以下の理由でサービスクローズした模様。

  • SpoonRocket Failory - SpoonRocket
    • 早さと低価格に力を入れていたにも関わらず、配送遅延が多く、レビューも荒れていた。
    • 競争環境が激化していた中で差別化が難しく、顧客からの信頼も得られず、資金調達も出来ず、あえなくクローズ。

  • Sprig Failory - Sprig
    • すべての要素にリソースを張ってしまって、どこも勝ちきらなかった。
    • 送料無料で展開してしまったので、利益を逼迫してしまった。
    • 高級ミール提供にはイートインといった場の提供が必要だったのかも。最後は資金ショートでクローズ。

利用シーンと日本での普及可能性

コーナーストアの利用シーンとしては、コンビニやスーパーやドラッグストアに買いに行く手間を省きたいような時だろう。夜お酒を飲もうとしてオフの時間に出るのが面倒、お酒を飲んでしまって車に乗れない、風呂に入ったから出たくない、化粧するのが手間、暑い寒い雨など、ちょっとしたお出かけが億劫になるシーンであれば500円は安い手間賃になるのかもしれない。

実際に、GoPuffは、創業者が大学時代に、深夜のコンビニにタバコとスナックを買いに行くのが面倒で始まった、キャンパス内で利用できる深夜の買い物代行サービスだった。

Beer, Band-Aids And Ben & Jerry’s: Why Venture Capitalists Gave Two 27-Year-Olds $1 Billion To Build The Ultimate Online Convenience Store

一方で、米国は基本的には自動車移動であり、コンビニの密度が低く、移動の手間が日本より大きいという背景もあって広がったのではないかという仮説はよく言われていることでもある。

日本ではコンビニやドラッグストアの密度が高いため普及しないのではないかという考えも自然である。

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東レ経営研究所「TBR産業経済の論点」コンビニ業界の現状と課題

(これ読んで、米国のコンビニって確かにスターバックスとかマクドナルドくらいの店舗数があってもいいよなと思った。セブンイレブンは、コンビニ店舗数が米国で4倍になっても問題ないほどの成長余地があると見込んでいる。)

そもそも出かけるって面倒だよね、という感覚があとから身についてくる側面も無視できないとも思う。特に、コロナでリモートが当たり前になっている人からすると、通勤時間に往復2時間かけていた時代に戻るなんていうのは考えられないだろう。実際、無くしてみたらやっぱ面倒だったし無駄だったよねという社会のコンセンサスともう戻れない堕落した身体を手に入れるのである。

もう一つ、コーナーストアが流行るためには、コンビニとの商品面での差別化を図るために、どこかのジャンルに特化したほうが良いかもしれない。

日本でのコーナーストア先行者として、Quickgetがあるが、基本的にはコンビニ商品を取り揃えているように見える。倉庫の物理的制約からロングテール需要のカバーは難しいため、ジャンル特化することで一部の消費者に対してロングテール需要を満たすという方向で差別化を図るということも考えられるだろう。逆に真正面からロングテール需要に対応しようとすると、大きな倉庫面積が必要になり、郊外での倉庫敷設が必要となり、倉庫内部の無人化や効率化にリソースも取られる上に、配達時間が遅くなる可能性が高い。

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配送料一律250円で注文から30分で自宅に届くデジタルコンビニ「QuickGet」、運営元のレキピオが総額1.7億円を調達

Foxtrotは酒とつまみに特化し、消費者が使いたくなるシーンや、一般のコンビニでは取り扱い切れないであろう商品を取り扱うなどで、消費者のニーズをうまく組み合わせて取りに行っているのではないだろうか。酒特化だと日本ではカクヤスが結構いい線行ってる気がするが、自身の感覚では「いまちょっと酒とつまみが欲しいんだけどな」というシーンで第一想起に上がらないのは、サービス訴求(宣伝)の問題だろうか?

コンビニでコーナーストアをやるとしたら、セイコーマートや成城石井(ローソン)がやると面白いかもしれない。UBER EATSでは補完しきれないホットスナックを夜食で届けたり、一般的な量販店では取り扱いがない酒とつまみの打線が組める。

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セイコーマート「ホットシェフ」25周年、人気商品の復活投票

日本ではまだメジャーになっていないコーナーストアだが、利便性の扉を押し開けられていないだけで、可能性は十分に感じる。

UBER EATSがここまで流行る以前に、飲食店の出前、宅配ピザ、出前館すらあったわけだが、ほんの少しの利便性向上(アプリから他店を比較しながら注文)とゴリ押し(クーポン)で一気に広がった感がある。一度体験すればそれが当たり前の選択肢となって定着する。

もちろん、そこにはラインナップの拡充による普段使いの出前需要を獲得できたことも大きく影響しているはずだ。

コーナーストアにおいても、ラインナップを広げていくと同時に、それがオンデマンド配送にハマるシーンを見つけていくことでキラーゾーンが見つかるのではないかと考えている。

一度人口に膾炙すれば、一般的なコンビニラインナップであってもコーナーストアで買われるようになり、徐々にコンビニのシェアを奪っていくと考えられる。

将来的には、無人コンビニも進み、店舗がダークストア化し、コンビニバイトへの要求が、レジ打ちや品出しからコーナーストアの配達へと変わっていくかもしれない。