VR系のイベントとかは結構行ってみて実際に触っているけれど、これは久しぶりに衝撃を受けた。
HMDを使ったVRとは違うんだけど、デジタルデータが目の前に飛び出してくる感覚が凄かった。この凄さって言語化するとなんだろうな?いろいろ要素分解して考えたけど、一言で言うと「没入感」の生々しさかと思った。
没入感=その空間にあたかも自分がいるかのように感じる感覚度合い、と言い換えることが出来ると思うんだけど、現状のHMDを始めとしたVRには、没入感を演出する工夫がたくさんなされている。その工夫がうまく機能した場合の没入感は凄まじいが、推奨環境以外(好条件以外)での体験があまりにも悪い場合が多い。先に上げた「zSpace」はそういった意味で、減点が極端に少ない(安定感がある)プラットフォームで、それがすごい=没入感生々しくて高い、につながっている気がする。
突き詰めると、人間に備わっている感覚(センサー)をVR上でどの程度再現して伝えるかによってVRのクオリティが決まってくる。これは「現実の再現度合い」と「その伝達精度」で決まると考えた場合に、下記のように分解できると考えた。
- 視界の追従性の向上
- 現実世界へのフィードバック
- コントローラーによるインタラクション
視界の追従性の向上
人間は外界に関する90%近い情報を視覚から得ていると言われている。よって、頭の動きに合わせたVR空間の描画の追従性は、かなり繊細な精度が要求される。この精度が少しでも悪いと、たちまち人間に違和感を与える。VR酔いにも繋がるこの追従性、今後もHMDの競争ポイントになる気がしている。HMDのなかでも、GearVRの追従性はイケてた覚えがある。描画が軽かった(あまりアプリに無理な描画処理などはさせないようにしている?)とかもあるのかな?GearVRといえば、スマホをプラットフォームにすることでビジネスモデルの面から乗り越えられるキャズムもあるだろうなと思った。開発する側もユーザーもお手軽だし、今のHMDの選択肢として最有力(そういえば、GearVR用のNetflixのアプリのロッジ感は気持ちよかった。)
話を戻すと、すごい美麗で難しい処理をワンテンポ遅れて実現するよりは、マインクラフトのような世界観でもいいので、頭の動きに敏感に反応して、追従性を上げてくれたほうが、使っている側として完成度は高い、と判断するだろうなと思う。
追従性については、頭の動きの初速度を感知して、次に頭が向く方向を予測しているようだが、アプリのシーン毎に最適化された加速度処理とかすると更に体験が良くなる気がする。また、HMDに加速度センサーつけるんじゃなくて、顎とかに別途センサーつけると、加速度がより俊敏に感知できるとかもあるかもしれない。
冒頭のzSpaceは、3DディスプレイなのでHMD特有の追従性とは無縁の世界で、ストレスなく使えたことからも、既存のHMDによるVRの弱点がなかったと思う。
もはや小型ドームを頭にかぶってプロジェクションマッピングで描画する、みたいなHMDの方がいいのかもしれない。視界カバー率を上げるために、頭を一回り大きい球体で囲むようなイメージ。
現実世界へのフィードバック
VR上での演出を現実世界の人間にフィードバックしてインタラクションを起こすっていう試みも様々ある。風とか、匂いとか、動く椅子とか、宙吊りにするやつとか。
手にはめたグローブで触覚フィードバックするようなものもあり、それは後ほど記載する。
シンプルだけど没入感高そうなのが、この鳥が止まってるかのように感じるやつ。
この間テレビでやっていたけど、チクチクする感じが絶妙だそう。小鳥の重みはもはやそこまで重要なファクターではなさそう。
あらゆる感覚に対して、何らかの方法でフィードバックできるわけで、人間の五感「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」にプラスして「重力感覚」「温度感覚」に対してフィードバックできる。(確かこの「重力感覚」にフィードバック出来るという話は、「バーチャルリアリティ入門」で、へえって思った覚えがある。)
「聴覚」だとバイノーラルサウンドがちゃんと作りこまれたコンテンツはまだ少ない印象。UnityのAddOnとかSDKとかでちょっといじったくらいだと厳しいのかな?(記憶だと、トンボのモンスターみたいなんが右背後から左全面に飛び抜けて行くRPGゲームだか何だかのトレイラームービーを観た気がするけどどこだったっけな。)
あとは「味覚」「嗅覚」あたりがVRにおいてはまだ未開って感じがする。FPSで火薬の匂いがしたりすると結構興奮すると思うんだけどな。デジタルデータ化できないとカートリッジとか買うのめんどくさそうだけど。それ解決するために電気信号をBMIコントローラーで送って「甘い!」とか「草の匂い!」とか思わせる時代が来るんだろうか。
コントローラーによるインタラクション
コントローラーを通じてVR空間に影響を及ぼせるようにすると、VR空間を現実世界と錯覚しやすくなり(現実と同じことが起きているので)没入感を補完出来る気がしている。
HMD系のVRサービスにおいて、コントローラーによるVR空間とのインタラクションはちょうど盛り上がってきているような気がする。かたつむりみたいな手につけるマーカーのやつとか、HTCの空港の金属検査みたいなやつとか。プレステのコントローラーをそのまま使う、というのもあるけど、没入感を失わせがちかな、とは思う。(もちろん、プレステのコントローラーを日々使っている人からすると、どんなコントローラーより気持ちのいいコントローラーになるんだろうけど)
最近はカタツムリ型モーションセンサーも進化しているようだ。触覚フィードバックもついてるっぽいな。
「Omni」は足をコントローラーに連携したことで「徒歩による移動」という実際の人間の動きをVR上に移植出来た。「Omni」のように、実物のメタファー効かせたり、人間の実際の動きをコントローラー化する発想って面白いよなあ。
銃のコントローラー然り、例えば、電子書籍VRアプリに対して本型のコントローラーを用意するイメージ。本型コントローラーのページをめくるとVR上でもページがめくれて、本の内容が描画される。料理用に包丁やフライパンのコントローラーがあったり。
そういったリアルもの系のコントローラーはこれと相性が良さそう。
この点、zSpaceはペン型マウスというまあまあ使い慣れたコントローラー型(ペンくらいはみんな握ったことある)の操作性の良さを追求したんだな、という印象があった。クリックで掴んで、手元に近づけると、3Dデジタルデータをピンセットでつかんでいるかのような感覚で操作できた。どちらかというとピンセットに近いかな。
逆に、没入感を阻害する減点要因を考えていく。この辺りはHMD特有なのかもしれないが、解決するとぐっと没入感を高められると思う。
- 装置の使用に際する違和感
- 視界の広さ、クリア度合い
- 装置の使用に際する違和感
まずHMDって結構重いし、ヘッドバンドで締め付けられててリラックスできない。つけてることを忘れられるくらいの装着感だと嬉しい。今のあのごついHMDだと長時間つけてられない。それがzSpaceにはほぼ無い。めっちゃ軽い3Dメガネをかけるだけ。究極、コンタクトレンズみたいなのがいいんだろうけど、10年くらいかかるのかな。それより、全面VR空間である部屋に入れてしまったほうが良い。
HMDにおいて視界情報が全てと言っても過言ではない。その視覚情報の伝達精度を下げてしまうのは残念。焦点が合わない(使用しているとずれていく)、画素が粗い(これはHMDのスペックの問題?)、枠が邪魔。ハードの小型化、改善でどうにかはなりそう。特に、汗による画面の曇りは早めにどうにかしたい。PlaystationVRで友達と貸し借りするたびに汗ついてるとかしんどい。あとは風通しよくするファンつけるとか、ワイパーとか、ガラコとか。VR用ガラコ。
というのを見ても、zSpaceは無理に没入感を演出する工夫を取り入れずに、勝負できるところだけで勝負していたので、(苦手なところは0点で乗り切って、決して減点されないようにして)いいところだけが印象に残ったのだと思う。zSpaceは、その操作性の高さでもって、シミュレーション系においては価値を発揮しそうだ。素材を組み合わせてプロトタイプ作るとか、それこそデモであったけど臓器の構造を観るとか。資材がいらないから、高価な時計の組み立てとか、化学実験の練習とか。無人島に漂流したという設定で、いかだ作ったり、釣り道具作ったり、テント作ったりするゲームやりたい。
最後に、元も子もない感じはするけど、没入感とかは関係なくアイデアとして突出して面白いと思ったのがこれ。
インターネットの「繋がる」という特徴をめちゃくちゃ上手く活用できそうで、ユーザーがお互いに自分のアトリエ空間を行き来するのが目に浮かぶ。
できることもシンプルかつ、いままでは存在し得なかった表現が可能になる。厳密には、3D空間を作り上げることは可能だったが、それは一部のスキルを持ったクリエイターだけで、こんなお絵かき感覚で3D空間に多種多様なテクスチャの絵の具を塗りつけていくようなことはできなかった。これはイノベーションの種の予感。未来の自由帳とクーピーみたいな。機能とかゴテゴテつけないで、コンセプトをシンプルに、丁寧に作りこんで欲しい。こういうのがぶっ飛んで流行ると本当にワクワクする。