自動運転レベル5(完全自動運転)っていつ来るのかな?と思って調べてみた。
自動運転レベルとは?
レベル3は、基本的にシステムが運転し責任を持つが、特定条件下(ODDで定義)では、人間の運転手が対応することを前提としている。
レベル4は、限定領域や限定条件下(ODDで定義)で、完全自動運転を行う。(定義上は、ハンドルやブレーキが不要になるレベル)
レベル5は、完全自動運転。人の介在は一切なし。
現在は、レベル3のものが市販車に出現し始めている。レベル4は実証実験段階。レベル5は未知といった状況。
詳細はこちらの記事がわかりやすい。
自動運転レベルを徹底解説!レベル0からレベル5で定義 それぞれの呼称は?
レベル5へのレース
自動運転に取り組んでいる企業は数多く存在し、自動車会社が資本を入れあっているため、プレイヤーの全体像を正確に掴むことは難しい。
Crunchbaseで「Autonomous Vehicle」に該当する企業だけで、1,462社もあった。
Autonomous Vehicles - Crunchbase
主な自動車会社の動きは以下の記事を参照しつつ、気になったものをピックアップしていく。
自動運転レベル3の定義や開発状況まとめ ホンダが2021年3月に車両発売
代表的な30社の相対的な競争力を表した図も分かりやすい。(Navigant Research)
Top 30 Self Driving Technology And Car Companies
Tesla
上記のNavigant Researchの図では、低評価なTeslaだが、自動運転をキラーコンテンツとして自社の自動車を売っていくというビジネスをコアにしているTeslaに完全自動運転を諦めるという選択肢はない。
2019年にDeepScaleというコンピュータービジョンの会社を買収し、イーロン・マスク自身も「自動運転にLiDARは不要」という発言をしていたが、直近、LiDAR開発会社との提携が発表された。
LiDAR開発のLuminar、躍進へ!テスラが採用?株価一時急騰 「自動運転の目」を開発
GPSで現在位置を把握し、高精度3次元地図データマップ(信号や標識、車線情報)を参照しながら、周辺環境を認識しながら走るのが自動運転の基礎的な理解だが、周辺環境認識の方法は、
・レーダー(LiDAR)を用いた方法
・人間と同じようにカメラ画像解析を用いた方法
の2種類ある。
LiDARがどういったものかはこちらの動画が分かりやすい。
LiDARは価格が高くなるというデメリットがあったが、量産や安価な生産手法の開発によってそのデメリットも消えてくる可能性がある。
光集積回路でLiDARを小型チップ化 従来価格の10分の1にも
実際、Tesla(イーロン・マスク)がLiDARを嫌っていたのも価格が原因だった。
「LiDARは馬鹿な使いっぱしりで、それを使う人は全員破滅への一途をたどるでしょう。破滅です! 高価なセンサーで必要性のないものです。例えるなら多くの盲腸を抱えるようなものです。盲腸を一つ持つだけで充分悪いですが、それが複数? 見ていて下さい。全員がLiDARを投げ捨てるでしょう。これが私の予測です。私の言葉を覚えておいて下さい。車にそれを搭載するとはまったく馬鹿馬鹿しいことです、高すぎて不必要なんです。(テスラのAI責任者である)Andrej Karpathyが言っていたように、視覚に関する問題を解決したら、それに価値はありません」
テスラが10年以内に自動車産業の世界的リーダーになるかもしれない
試行錯誤しつつのTeslaだが、100万円のオプションとして売り出した「Full Self-Driving System」はレベル2とのこと。
テスラ「FSDは自動運転の能力ない」 カリフォルニア州当局に説明
とはいえ、Teslaには、イーロン・マスクのリーダーシップというか、ホラ吹き力というか、諦めない起業家精神というか、そういったものがTeslaをレベル5に連れて行ってくれることを消費者に信じさせられる力というか、そういった雰囲気がある。イーロン・マスクなしでは、Teslaは成立しないとも思えてくるほどだ。
テスラ株急騰!資金調達力背景にずば抜けた「自動運転の実現力」
資金力もあるため、新進気鋭の有力プレイヤーは買収によって抱き込むこともでき、間違いなく業界をリードするプレイヤーではあるので動向に注目。
Volvo
かなり大きく出ているVolvo、来年にレベル4が本当に出るとしたら、一気にトップに躍り出そうな予感。
ボルボ 2022年「レベル4」自動運転開始! 驚きの新技術とは? 国内の動向は??
Honda
2021年3月に発売された「レジェンド」で世界で初めてレベル3の実用化に成功している。
100台限定、価格は1,100万円でリースのみ、ODDは高速道路渋滞時と限定的だが、国からの認定含め、大きな一歩である。
ホンダが自動運転レベル3車両を3月5日発売!新型「LEGEND」がデビュー
Amazon
物流を目的に自動運転に取り組むとしか思えないAmazonは、意外にも自動運転タクシーを子会社化している。
最高時速120km!Amazon傘下Zoox、攻めの自動運転タクシー用車両をお披露目
肝心の物流はというと、Plusという中国スタートアップに自動運転トラックを発注しており、20%の出資も検討しているとのニュースが出ている。
Amazon、トラック自動運転システム1000台分を中国系スタートアップに発注
Zooxは小回りを効かせてラストワンマイル用に、大まかな物流はPlusで、という役割分担だろうか。それともZooxがうまく行ってないのか。
Zooxから自動配達ロボットのScoutが出てきて、エレベーターに乗ったり、玄関前に置き配をしてくれたりという未来も想像できる。
Amazonの自動配達ロボ「Scout」がエリア拡大中、国内はどうなる
いずれにせよ、ECにおける物流は倉庫でのピッキングと同様、大きなコスト優位性を生み出すため、今後も投資は継続するはずである。
Google (Weymo)
Waymoでレベル4の実証実験を行っている。トラックやタクシーといったサービスレイヤーでの展開を想定しており、Googleが乗用車を販売するというよりは、自動車会社と組んで、移動レイヤーのサービスを握りたい模様。
ダイムラー・トラックとグーグル「ウェイモ」、戦略的提携…レベル4の自動運転トラックを共同開発
「Waymo One」、完全無人の配車サービスを一般提供へ--アリゾナ州フェニックスで
価格は?
車体価格は、そのブランドや内装などによって大きく変わるため、ここでは取り上げない。
基本的に、自動運転のシステム自体はコモディティ商品になるので、長期的には下がっていくと予想される。
直近ではTeslaはシステム単独で約100万円の値付けをしている。
Teslaが「フル自動運転」オプションの価格を100万円超に引き上げ
コスト観点では、自動運転技術が進むにつれて辛くなると思われるのが、タクシー業界である。
Uberは、一般人がお小遣い稼ぎで運転手を買って出ることを利用し、タクシー運賃に価格破壊を起こそうと目論んだが、イギリスでは、ドライバーは一律従業員扱いにするように、とお達しが出ており、最低賃金がコストとして発生する形となる。一方で、米国では個人事業主扱いとなっている。
英最高裁、ウーバー運転手は「従業員」 最低賃金や有給休暇などの権利認める
ウーバー運転手は「従業員」にあらず 米で規制見直し「事業主」扱いに、過酷労働・低賃金など問題山積
いずれにせよ、自動運転タクシーの価格と、タクシー運転手の生活費が逆転したタイミングで、タクシー運転手という職業は、車内サービス業や自動運転タクシー整備業になるか、それをもってなくなるかのどちらかだろう。(IC改札によって、改札員という職業が無くなったように。)
自動運転技術は、運転という労働力の価値を極限まで引き下げるということを狙って開発される運命にしかない。
立ち戻って、Uber(と競合であるLyft)は、移動コストを下げるための会社であり、そう考えると、自動運転に熱心に取り組むこともうなずけるのだが、直近で、自動運転から手を引いている。
ウーバー、自動運転部門を競合他社に売却へ…トヨタとの提携はどうなる?
Woven Planet, a subsidiary of Toyota, to acquire Lyft’s self-driving car division
自社での取り組みに勝機がないと感じたのだろうか。こうなってくると、UberとLyftは、ユーザーとのインターフェイスを持つことがメイン事業となり、Weymoが直接的な競合となってくる。MaaSをマネージする立場としてのサービサーとしてはGoogleは強敵だ。
The future of urban transit: A conversation with leaders from Uber and Via
レベル5へのハードル
UberやLyftが諦めた(と思われる)ことや、MITは10年以上かかると予想しているように、レベル5実用化のハードルは高い。
完全自動運転車の実現はいつ?――MITの見解は最短でもあと10年
現在、Weymoがレベル4の実証実験、Hondaがレベル3(高速道路渋滞時)の商用化、Teslaはじめ多くの自動車メーカーがレベル2の段階にいる。
ただ、寡聞にして、具体的な技術的障壁を列挙した上で、自動運転の困難さを語ったものを見たことがない。状況認識の汎用性と精度の問題であれば、時間が解決する可能性も高いのではないだろうか。
状況認識だけではなく、高精度地図データが必要だというところも勘案すると、国全体レベルでの高精度地図データが必要だという見方もある。
自動運転とテスラ、「近くレベル5実現」宣言は国抜きで語れない
事故を起こしたときの責任の所在など、法整備は間違いなく必要だろう。下記記事では、完全自動運転時には刑事責任はメーカーにあるだろうという見解を示しているが、果たして、交通事故の全責任をメーカーが追うのだろうか。
自動運転「無免許でOK」実現に近づくも、事故や違反の責任どうすべきか
安全性の認識についても、解決には時間がかかる部類のものである。飛行機と似たようなもんかなと思うのは、やはりある程度(それこそ5年くらい)、走行実績などを積み重ねて、事故がどのくらい起きるのかといった統計データが信頼できるレベルで集まらないと、アーリーアダプターからレイトマジョリティには移行しないだろうと思う。
Why Self-Driving Car Companies Need To Focus On Safety To Succeed
技術的なハードル、法改正のハードル、安全性のハードルと、相互で足並みを確認しながらジリジリと世の中に浸透していくような気もするため、MITの10年以上というのはあながち間違いではないと思う。その中でも、まずは技術的なハードルが最も早くレベル5を達成し、その後に、安全性が確認でき、法改正に動く、といった流れが予想される。