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日々の徒然

テスラの企業買収から見る、電気自動車の注目ポイントの移り変わり。

今や、電気自動車の代名詞にまでなってきた?テスラであるが、テスラが創業から今までに買収してきた企業、給電スタンドの状況などから、電気自動車界隈のポテンシャルを垣間見た。

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❏ テスラが買収してきた企業

テスラの創業は2003年。Crunchbaseの買収セクションをチェックすると、2015年から2021年5月までに9社の企業を買収している。9社のうち、4社がバッテリーに関する企業で、それもここ5年に集中している。2015年付近の企業買収は、電気自動車の車体製造関連に集中している。流れとしては、電気自動車を作れるようになる→バッテリー性能を伸ばす、になっていることが分かる。

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Crunchbase - Tesla

❏ 連続走行距離

テスラがバッテリー投資にこだわる理由は連続走行距離にある。2010年時点では、電気自動車の連続走行距離は、200kmにも満たなかった。一方で、ガソリン車は平均して400kmは走るため、2倍ほどの開きがあった。

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我が国の電気自動車の普及についての考察

すでに発売されている国産電気自動車のカタログ航続距離(WLTCモード)は日産「リーフ」は62kWh仕様が458km、40kWh仕様で322kmとなっています。

結局、EVの航続距離ってどれくらい妥当? 充電インフラはすでに解決済みなのか

連続走行距離が短いと、頻繁に充電しなければならない。後述の通り、ガソリンスタンドに比べて、給電スタンドは少ないため、電気自動車において、連続走行距離は、ガソリン車以上に重要になってくる。2017年には電気自動車の連続走行距離は、ガソリン車同等レベルの400kmまで追いついたが、給電スタンドの普及状況を考えると、ガソリン車同等の400kmでは足りないと言えるだろう。そこでテスラはバッテリー技術に投資することで、この400kmを更に引き伸ばしていくことが電気自動車普及において重要だと考えているのである。

実際にその投資は実を結んでいる。テスラの最新モデル “Model3”(記事冒頭画像)では、連続走行距離を580kmと謳っており、"Model S"については、連続走行距離400マイル(644km)を超えた初めての電気自動車となっている。

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テスラ『モデルSロングレンジ・プラス』のEPA航続距離が400マイルを超えた!

一方で、ガソリン車のトップ層は、満タンで1,000km弱ほど走ることを考えると、644kmでも十分とは言えないかもしれない。

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ワンタンクでどれだけ走れる? 燃料タンクが大きいクルマの航続距離

また、そもそも、ガソリン車をベンチマークにするという考え方自体が間違っている可能性もある。自宅駐車場に充電スタンドがあれば、常に満タン状態で出発することができ、スマホの充電のような考え方でよく、1日の走行距離だけ賄えれば十分となるかもしれない。

❏ チャージャー拠点数

ただし、バッテリーの技術的進歩に投資するより、充電スタンドの増設に投資したほうが報われる可能性が高い。

充電スタンドは、マンションの駐車場にも設置できるように、ガソリンスタンドの設置に比べて遥かに容易に設置可能だ。

現在、給電スタンド数は、急速充電に限ると全国に8,000弱、普通充電も含めると2万強ある。

ただし、普通充電は、その充電時間が5時間以上になることを考えると、ドライブ中に立ち寄って給電するには不向きで、実質8,000弱の給電スタンドがあると考えて良いだろう。

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充電スタンド登録拠点数

他方、ガソリンスタンドは年々減少傾向だが、3万ほどあり、給油利便性はガソリン車が勝っている状況だ。

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給油所数について

❏ 充電時間

次に満タンまでの時間を比較してみる。ガソリン車は特に参考記事などはないが、生活の経験上、大体5分もあれば満タンになることが多い。

電気自動車の給電の場合はどうかというと、普通充電の場合は5~8時間、急速充電の場合は30分、テスラ独自のスーパーチャージャー方式の場合は12分で50%以上を充電するとのこと。

EV(電気自動車)の気になる充電!時間や場所、料金は?

【EVの素朴な疑問①】急速充電と普通充電、CHAdeMOとテスラスーパーチャージャーの違いはなに?

テスラ モデル3をスーパーチャージャーV3に繋いでみたら、12分以内で50%の充電完了!

テスラのスーパーチャージャーでさえ満タンにするには30分程度はかかる。生活の中で用事のついでにしては長すぎる時間である。

おそらく電気自動車普及の次の論点はこの給電時間になると思うが、いくつかソリューションが出てきている。

マンションなどの住宅への給電スタンド設置企業のWeChargeは2021年6月サービス開始。

WeCharge

色々ハードルあるけど、移動サービス込で利便性高い。

テスラ車を時速113kmでけん引すればバッテリーを高速充電できるのか?

電動スクーターではあるが、電池ステーションを用意し、満タンになっているものと交換できるというもの。

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“電動スクーター界のテスラ”台湾ゴゴロの「電池サブスク」が圧倒的に支持される理由

給電ステーションに併設されたバッテリー交換ロボット(プレミア料金)というのが現実的にはあり得そうな気もしたが、電気自動車においてはその未来は遠いかもしれない。

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テスラが“電池交換式”を断念、モデル3に痕跡

当たり前だが、コストと技術開発余地との両睨みで、どちらに張るのかは決めていくのだと思う。

❏ 燃費

最後に燃費についてだが、ここはすでにガソリン車を超えている部分や、再生可能エネルギーの活用なども考えると長期的にガソリンに対しては優位性を持つと考えられるため、かいつまんで見ていく。

テスラの”Model X”は、4円/kmの燃費という試算がある。

●年間の燃料費
仮に年間走行距離を1万kmとして、毎月平均833kmを走行すると、モデルX 100Dの航続距離は約560kmなので、月平均に1.5回の充電が必要になります。
1回目の充電は満タン、2回目は半分の280km分の充電が必要です。この場合の毎月の電気料金は、1回目の1,952円と2回目2,470.4円の半額の合計3,187.2円となりますが、実際には毎回フル充電するものと考えた場合。年間では、1,952円の支払いが6回、3,187.2円の支払いが6回で、年間の電気料金は30,835円になります。
1kmあたり約4円で走行できるのは、お得な感じがします。さらにお得にするのであれば割安な電気プラン、深夜電力の活用、不要な充電を控えるといった対策が考えられます。
(20174月のデータです)

テスラ モデルXの維持費っていくらかかるの?

平成30年の燃費ナンバーワンはプリウスで、2.5円/kmくらい。ただし、プリウスはプラグインハイブリッドで電気だけでも走れるけど。

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最も燃費の良い車はプリウスでした!~軽自動車部門では、アルトとキャロルが最高燃費~

ガソリン車に絞ると、スイフトが1位で、7.4円/kmなので、すでに電気自動車のほうが燃費良い感じになってきてはいる。

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E燃費アワード 2019-2020

❏ 意味の消費

ところでテスラに限って言うと、その所有動機が、車体スペックのみで語りきれない部分があるような気もした。割と有名な話だが、自動車界のAppleと呼ばれているのも分かるような。

GAFAのなかで、Appleだけが「意味」の世界で闘っている グローバル競争で生き残るのに必要な、たったひとつの考え方

そういったことを分かってか、クリーンでスマートで合理的なイメージを強化するべく、近年はこういった取り組みも始めているテスラ。

EVが走り回る未来──の前にリサイクルバッテリーの開発レースが待っている

バッテリーリサイクルRedwood Materialsが拡大の一環としてテスラギガファクトリーの近くに拠点設置

そんなテスラでさえ、というか、だからこそ、というのか、全体的に基本のキをめちゃめちゃ押さえているところが印象に残った調べごとだった。

未来を創る上で、電気自動車は良いテーマだと思う。テーマを選んでドカッと張るセンスが優れていると感じた。